ボトックス治療
T、ボトックスの局注は、顔瞼痙攣、片側性顔面痙攣、ジストニアに保健適応を得た有効な治療法です。
ボトックスは、しわを取るなどの美容整形にも使われているぐらい比較的安全に使えますが、実は、食中毒をおこすボツリヌス毒素より抽出されたものです。しかし、長年の研究より、これを少量抽出し、筋肉に注射すれば、副作用もなく、筋肉が緩み、痙攣がおさまることが立証され、商品化されたものです。
U、まず、疾患について説明致します。
1)顔瞼痙攣
眼の周りには眼輪筋(がんりんきん)といって,瞼を開閉に関わる顔面神経系の筋肉があります。眼瞼痙攣は,この両眼の眼輪筋に自分の意志とは関係なく力が入る病気で,中高年に好発します。初期症状は眩しさを感じたり,眼がパチパチすることから始まります。その症状は明るい場所や精神疲労で悪化し,徐々にひどくなると眼瞼を閉じる力が続くようになり,日常生活に支障をきたすようになります。症状の進行は比較的ゆっくりしていますが,そのまま放置して自然に治る病気ではありません。
2)片側顔面痙攣:顔面神経が圧迫されることにより,ほとんどが片側性(左右どちらか)ですが眼の周り(眼輪筋)だけでなく口の周りの筋肉まで痙攣が及びます。顔面神経が脳血管により圧迫されておきることが多いのですが,念のためMRIなどの検査を行う方が良い場合があります。症状は,片方の眼の周りの軽いピクピクした痙攣から始まり,次第に同じ側の額,頬,口,顎などへ広がって行き,持続的な痙攣が起こります。顔がつっぱったり,痙攣側の筋肉の麻痺が生じてくることもあります。40代〜70代の中高年の方に発症することが多いと言われています。
3)痙性斜頸(ジストニアの1つ)
首や肩は多数の筋肉が重なりあっており、それぞれが頭部の動きに深く関係しています。痙性斜頸(けいせいしゃけい)は、それらの筋肉が自分の意思に関係なく収縮し、頭、首、肩などが不自然な姿勢を示してしまう病気です。
V、方法
痙攣している筋肉に,痙攣を抑える作用をもつボトックスを何箇所かに注射します。
眼瞼痙攣、片偏性顔面痙攣、ジストニアに対するボトックス療法は、所定の研修及びボトックス使用の認定を受けた医師のみしか施行できません。当院では、院長がボトックス使用の認定を受けています。
W、効果
注射後2−5日で効果が現れ、2〜5週間で効果が最大となります。残念ながら、効果は4ヶ月目頃より徐々になくなります。再注射が必要になります。
X、費用:ボトックス注射液の値段が高く、3割負担で約3万円します。
Y、副作用:治療後,注射した筋肉の力が弱くなりすぎて,瞼を閉じるのが難しくなったりする場合があります。痙攣している筋肉以外にも薬の作用が効いてしまった場合,かえって瞼が開けにくくなったり,ものが二重に見えたり,顔の表情が少し変わってしまうことがあります。しかしこれらの副作用は,薬が効きすぎている為で,薬の作用が減少し元の状態に戻るにつれて,そのような副作用はなくなってきます。
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